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のんこちゃんとクロネコ [おはなし]

クロネコは旅している最中、いろんなことを見聞きしてきました。
これはその一つ。


「今日は気持ちがいいなあ」

もうそんなに寒くもなくなった春の日中、クロネコは、あるお家の庭を通りました。

初めての場所ですから、身を潜められそうな木々や植物の間を通りながら。
こんな場所は虫さんだってみつかりそうだし!
(虫さんは、旅するネコにとっては貴重なタンパクゲンなのです)

ふと草むらから見上げると、お庭の真ん中には小さな女の子がいました。
女の子は一人でした。
そしてなんだか悲しそうな風に見えました。

「どうしたのかな」とは思いましたが、「怖いな」とも思ったので、気付かれないように見ていました。
不用心に近づけば追い払われることだってあると、これまでの経験で、クロネコは知っていましたから。

実はこの子は、お母さんから叱られたばかりなのでした。
忙しくしているお母さんにあんまりまとわりついていて。
だって女の子は、お母さんに甘えたくてしようがなかったのです。
そんなときってあるでしょ?

「そんなわるいことしてないもん・・」
女の子は思ってました。
「忙しいから、つい大きな声を出してしまったわ・・」
洗濯物を干しながら、お母さんも悲しいのでした。

「のんこちゃん、いらっしゃい」
しばらくして洗濯を終えたお母さんの声が聞こえました。
「おかあちゃん!」

泣きながら駆け寄って、しっかりとお母さんにしがみついた女の子を見て、クロネコは思いました。
「おかあちゃんって、きっと、とってもいいものなんだわ、よかったね。」

クロネコも、なんだかおっきくて温かくてやさしいものを思い出したような気がしました。

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