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月夜の晩に [おはなし]

月夜の晩には 亡くなった猫たちが戻ってきます。
細く細く、もう消えてしまうくらいの、でもくっきりと輝く三日月の夜のことです。

そのお月様が天高くにのぼった頃、飼い主の寝静まった暗くて静かな部屋に、やがておぼろげに、向こうの国に行ってしまった猫たちが姿を現してきます。

猫たちは、自分たちが使っていたお座布団で寝ていたり、壁に映る影を追いかけて遊んでみたり、お互いを掃除し合ったり、かけっこしたり、窓の外を眺めたり・・その姿は生きていた時のまま。
昔の通り、気ままで幸せそうに一晩を過ごします。

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でも向こうに行った猫たちは、どういうわけか、どの猫もとてもシャイ。
飼い主にさえ、姿を見せません。
あるいは見せてはいけないと、猫の神様にいわれているのかも?

だから、細い三日月が天高くにのぼっている真夜中に、猫たちが生きていた頃に聞こえていたおもちゃを転がす音や、足音が聞こえても、あるいは、そっとあなたを覗いているような気配がしても、猫たちを驚かせないように、そのままじっと目をつぶっていてあげてください。

途中で目を開けてしまうと、あわてて、猫たちは姿を消してしまうかもしれません。
以前のようにふれあえないのは寂しいですけど、そうでないと、慌ててしっぽだけ残ったなんて事になったら可愛そう。

猫たちは、ひとしきり自分たちが生きていた頃過ごした場所で好き勝手をしたあと、飼い主さんのほうに鼻を向けて目を細め、ふわと姿を消して、向こうの国に戻るのです。

でもね、大丈夫。
私達が猫たちのことを思い出す限り、細く光る三日月の夜には、必ずあなたのもとに戻っているんですから。
そしていつもそうだったように、猫たちは、穏やかで楽しく暖かな時を送っているんですから。

いつまでもいつまでも、あなたが望む限り、あなたのそばにいます。
見えなくたって存在するもの、そんなの世の中にはたっくさんあります。
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 [おはなし]

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それはたしかに、くーちゃんの声だった。

急いでその部屋に行ってみると、逆光の中に1匹のねこ。
大きさも(小ささというべきか)姿もくーちゃん。

「くーちゃん」
脅かさないようになるべく穏やかな声で呼んでみた。

ねこは、特に怖がる風もなく、掃除を始めた。
(うちではねこが体を舐めるのを”掃除”とよぶ)

「くーちゃん、くーちゃん、くーちゃん!」
私は気づいてほしくて、段々と声を荒らげていった。

ほら、くーちゃんはやっぱりいたんじゃない!
誰に言うともなく、文句が出る。

そのねこは自分が呼ばれているのに気づいて、こちらにゆっくりと歩いてきた。

けれどやがてねこに光があたると・・・顔に縞模様がみえた。

キジねこだった。

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”ネコを飼う”、なんて嘘っぱち [おはなし]

秋になると、あちらこちらから虫の声が聞こえだします。
草むらの中で、たくさんの虫たちがさかんに鳴いている事もあれば、庭の一角に1匹だけ、鳴いている虫も。
みんな、どこかさみしげだけど、何かをしきりに話しかけているようにも聞こえます。

そのなかに、ネコを亡くしたばかりの飼い主に届く虫の声があります。

飼い主の寂しい気持ちを思いやる、亡きネコの声に聞こえるそうです。

「あたしはここ、ずっとそばにいるよ」

「寂しくないよ、大丈夫だよ、一緒だよ」

それはきっときっと、飼い主と、もはやこの世に姿を持たないネコのあいだにだけ、聞くことのできる虫の声なのです。

その声が聞こえるから、空っぽのおふとんの中でも、飼い主は暖かでいられます。
その声は、眠りにつくまで、ついたあとも、ずっと飼い主を見守ってくれています。

”ネコを飼う”なんて、世間では言いますけど、そんなの嘘っぱちです。
ネコが、飼い主を見守ってくれてるんです、生きていたときも、消えてしまったあとも。

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悲しいネコ [おはなし]

ネコは悲しいとき、人間と同じ、涙を流して泣きます。

ほら、ネコの目に目ヤニがついてることあるでしょう?
泣いたあと。

泣く理由は、いろいろ。
ネコにもよるし、年齢にもよるし。
例えば、おなかすいてるのにお椀にご飯が入ってないとき、なんてこともあるし
覚えのないいたずらをおこられたときとか、それから仲間を亡くしてしまったときとか。

ネコはプライドの高い動物ですから、その場はじっと目を見開いて一点を見つめているだけ。

そしてキャットタワーの中や、お気に入りの箱の中で
夜、一人になったときに、そっと涙を流すんです。

悲しくて悲しくて、何も考えられずにいると、そのうちそのまま眠ってしまって。
悲しい気持ちと眠い気持ちは同じなのかも。

でも、泣いたの?悲しいの?なんて聞いちゃいけないんです。
もしネコが何でもなかったような顔してるなら、そっとしておいてあげたほうがいいんじゃないかな?

あとでそっと頭をなでてあげれば、ちょっとだけ、悲しみがあたたまるかもしれない。

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3匹でひなたぼっこ
大黒柱のゴンがいなくなった今ではもう、見ることのできない風景。
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真夏の夜の出来事 [おはなし]

真夜中の帰り道はもう人通りも車の往来もなく、ただ、暑かった昼間の名残りが、もわっとした空気ともやを残していた。

そんな道を淡々と車を走らせていると、どこからか声が聞こえた。
複数の人が喋っている声?

誰もいなかったような気がしたんだけど。

「今誰かいた?」
「んん?なに?」
横に座っている家人は、仕事疲れでウトウトしていたようだ。

「確かに何人かでおしゃべりしている声が聞こえたんだけどなあ・・」

もうほとんどうちに着こうかという頃、また聞こえだした。
「大丈夫?」とか「うん」とかなんとか、友達どうしで言ってるような感じ。

駐車場に車をおいて、聞こえたあたりに戻ってみる。
あたりは田植えもすっかり終わって、稲が育ち始めている田んぼだ。

声は聞こえない。

「空耳だったかなあ・・?」
もう遅いので、諦めてうちに戻り始めると、また聞こえだした。

でも人の声じゃない。
それは、あたり一面の蛙の声。

「あ、カエルさんたちだったのね。明日は雨なのかなあ?」
「ゲロゲロッ」「ゲロッゲロゲロッ」
水を張った田んぼ一面から聞こえる。

「おやすみなさ~い」

布団を敷いてもう寝ようかというころ、
窓の外ではまだ盛んにカエルたちが明日の天気の相談をしていた。

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猫のおうち [おはなし]

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「あら、あんなところに、家が建つのね」

そのあたりは、小さな川が斜めに流れていて、川のほとりは季節になるときれいな花が咲き乱れるところではありましたが、家を建てるにはちょっと不具合そうでした。

まあ、小さなおうちだったら、いいのかもしれません。
実際、土台はとても小さく、一人暮らしかな?と思うくらいの小さな家になりそうでした。

でも、小さい以外も、そのおうちはちょっと変わってました。
それからなかなか出来上がらなかったんです。

いや、正確にはおうちは少しずつ(ほんとに少しずつ!)できがったのですが、家に必要な玄関に登る階段とか、塀とか、お庭とか、車庫とか、そういうものがなかなか出来上がりません。
それに、お家を建てる大工さんだとか左官屋さんだとか、見たことがありません。

もしかして、お金があまりなくてゆっくりなのかな?とも考えられましたが、そうでもないらしい。
建物ができあがったあと、誰かが越してきたようには見えなかったんですから。

家が建ってしばらく間があってから、塀ができ始めました。

でも、あ、始まったかな?と思うと少し休憩(休憩というのでしょうか?)、ちょっとできたらまた休憩、というふうに、できあがるのに長い時間かかりました。
その間も、左官屋さんの働く姿を見たことはありませんでした。
普通なら、どれくらい出来上がったか、気になって見にくるはずのそこの住人も、まったく見たことがありません。

だから、1年経ったころも、まだ、人の気配のしないおうちでした。
何も進展がありません。

2年が経ったころでしょうか、お家を囲む塀がようやくできあがったのは。

でも、なかなか人が越してきません。

ね?へんなおうちでしょう?

「どうしたものかしらん?どうして誰も越してこないんだろう?」
傍でみていても、気になりますので、こちらもだんだん、誰も住んでいないのをいいことに、通るたび、カーテンの奥に誰ぞの気配がしないか、目を凝らして見るようになりました。
(そう、カーテンなんかは、どっしりと重たいやつが早くから吊ってあったんです!)

ある夜、1つの部屋に明かりがついているのを見つけました。
「あ、やっと誰か越してきた」

しかし、おうちはひっそりとしていました。
まるで、留守中に防犯のために照明だけつけてるように。

だいたい、引っ越ししたら、トラックも来るし、ダンボールの箱やたくさんのゴミも出るだろうし。
新しいお家の庭に飾る花の1つもありません。

ただ明かりがついているだけ。
人が住んでいる気配がしないんです。

もしかして、指名手配の犯人がひっそりと身を隠しているのかも!?
あるいは、おうちの地下に埋蔵金が埋めてあって、夜中にこっそり掘リだしているとか!?

そんなことを考え始めると、もっと気になり始めて、こちらももっと大胆になって、お家の周りをグルっと回ってみたりし始めました。

不思議に思いながらも幾日かが過ぎたある晩方、トントン、と玄関を叩く音がしたような気がしました。
(とても小さな音だったんです、まるでネコのしっぽが戸にあたっているくらいの。)

出てみました。
誰もいません。
でも、戸を閉めると、またしばらくして、トントン。

戸を開けても誰もいない。
閉めると・・・トントン・・・・・

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「あたしが出るわ」
ふんふんと音のする方向の匂いを嗅いでいたうちのシロネコが、さっさと玄関に行きました。
(シロネコはうちの中で一番勇気があるネコなんです。)

今度は誰かがいたようでした。
しばらく玄関で話し声がしたあと、シロネコは戻ってきました。
かつぶしの包みを持って。

あのおうちからのものでした。
(実は、あのおうちは、うちのすぐ近所です)

あの家は、キジネコ一家の家で、キジネコ母さんと子供のトラジマ、シロ、シロチャ、ミケが住んでいるそうです。
人間のおうちではなかったんですね。

たしかに、ネコの一家ならあの大きさのおうちで十分です。
人間だけでなく、ネコにとっても、雨露、寒さ暑さをしのげる家は便利ですしね。

それに、草むらでは虫さんやトカゲさんを捕まえることもできるし、小川でお水を飲むこともできるので、生活にも困らなそうです。

ああ、だから、人影もなく、大きな引っ越し荷物も、ゴミもでなかったのね。
やっと合点がいきました。

そうそう、キジネコからの言伝です。
「私達は夜に生活してますので、昼間は眠たいのです。人間と関わるとロクナコトがないので、どうかそっとしておいて下さい。」

私達が時々、興味津々で覗いていたの、きっと中にいて気づいていたんですね。
キジネコの子どもたちは、時々近づく影におびえていたのかもしれません。
それで渋々、うちに挨拶に来たんだけど、やっぱり人間とは関わりたくなかったということでしょうか。

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「それぞれのおうちにはそれぞれのジジョーってもんがあるからね」
うちで一番もののわかったチャトラネコが言いました。
もっともだと思いました。
キジネコには今度、「どうも大変失礼しました」と伝えてもらうことにします。
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のんこちゃんとクロネコ [おはなし]

クロネコは旅している最中、いろんなことを見聞きしてきました。
これはその一つ。


「今日は気持ちがいいなあ」

もうそんなに寒くもなくなった春の日中、クロネコは、あるお家の庭を通りました。

初めての場所ですから、身を潜められそうな木々や植物の間を通りながら。
こんな場所は虫さんだってみつかりそうだし!
(虫さんは、旅するネコにとっては貴重なタンパクゲンなのです)

ふと草むらから見上げると、お庭の真ん中には小さな女の子がいました。
女の子は一人でした。
そしてなんだか悲しそうな風に見えました。

「どうしたのかな」とは思いましたが、「怖いな」とも思ったので、気付かれないように見ていました。
不用心に近づけば追い払われることだってあると、これまでの経験で、クロネコは知っていましたから。

実はこの子は、お母さんから叱られたばかりなのでした。
忙しくしているお母さんにあんまりまとわりついていて。
だって女の子は、お母さんに甘えたくてしようがなかったのです。
そんなときってあるでしょ?

「そんなわるいことしてないもん・・」
女の子は思ってました。
「忙しいから、つい大きな声を出してしまったわ・・」
洗濯物を干しながら、お母さんも悲しいのでした。

「のんこちゃん、いらっしゃい」
しばらくして洗濯を終えたお母さんの声が聞こえました。
「おかあちゃん!」

泣きながら駆け寄って、しっかりとお母さんにしがみついた女の子を見て、クロネコは思いました。
「おかあちゃんって、きっと、とってもいいものなんだわ、よかったね。」

クロネコも、なんだかおっきくて温かくてやさしいものを思い出したような気がしました。

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月夜のゆき [おはなし]

ゆきは、真っ白な猫でした。
森で生まれたほかの兄弟ネコたちと同じで、小さい頃から、人間は怖いものだと教わって育ちました。
だから、皆で追いかけっこをして遊んで、ついつい、森の外に出てしまうことがあっても、人間の姿を見ると、たちまち木の陰に隠れて息を潜めるのでした。

でも森の中には、食べるものも、遊ぶところも兄弟もいるので、ゆきは毎日楽しく暮らしていました。

それでも、兄弟の中には、やがて人間に拾われていったり、喧嘩や病気がもとで死んでしまったものもいて、3年が過ぎたころ、気がつけば、ゆきは兄弟の中でただ一人、この森に残っていたのでした。

けれども、ゆきは、一人っきりだったわけではありません。
ゆきには、もう3匹の子供がいました。

今では「遠くに行くんじゃありませんよ」と、いたずら盛りの子供たちに注意しながら、すっかりお母さんとして、この森でまいにちを幸せに過ごしているのです。

実は、白ネコには昔っからのきまりがあります。
ゆきは、満月の夜には一人っきりでお月様に挨拶をしなければなりません。

昨夜は、その月に一度の満月でした。
子猫たちが寝たのを見届けて、ゆきは一人でお月様の見える、森の丘に登りました。

「お月様、こんばんは」
お月様に照らされて、ゆきの白い体はいっそう輝いていました。

そのとき、「おかあさーん」と鳴く、子供の声がしたように思いました。
ゆきはハッとしました。
ここは道路を渡った丘、まだ物事のわからない子供が来るには危なすぎます!
ゆきはあわてて子供たちのところへ戻ろうと、丘を降りて、道を渡りました。

そのとき!
人間を乗せた大きな黒い物体がものすごいスピードでやってきたのです。

いつもならゆきは、身を隠してそれが通りすぎるのを待っているのですが、こんな夜だし、子供が心配で急いでいて気がつかなかったのです。

次の日の朝、ゆきの冷たくなった白い体は、道の片隅に横たわっていました。
あれだけ、人間には気をつけなさいと子供たちに言っていたゆきだったのに・・・。



運転中に道路に横たわっていた白い猫をみて。
この猫も、ほんの少し前まで、温かで、楽しいことも仲間もいて、日々の暮らしがあったんだと思うと、いとおしくて・・。
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くーちゃんと森の守りネコ [おはなし]

「くーちゃん、くーちゃ~ん」

くーちゃんは、時々いなくなります。
いつものネコ座布団にもいない、リビングの机の下の座布団にもいない。
間違って閉めたかも?・・・こっちの押し入れもあっちのも探したけどいない。
トイレ?・・・いない。
いそうなところは全部探したのに。

一体どこ~?と困惑することが時々あります。

そんな騒ぎがいっとき続くと、しばらくして、くーちゃんは大概、何もなかったようにすました顔で出てくるんです。

あれは絶対、森の守りネコと会ってるんだと思うんです。
だって、くーちゃんは、森の守りネコの紹介で、うちに来たんですから。

きっと時々、森の守りネコとは連絡とることになってるんだ、と、私は考えるのですが、
とにかくやっと見つかったくーちゃんを抱きあげて、その柔らかい黒い毛に顔を埋めると安心して、
つい今まで、問いただすのを忘れてしまってます。
ああ、いてよかった。

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くーちゃんの袋 [おはなし]

~ネコのおなかには、不思議な袋があります。そっとなでると、細かなお日様色の粉が舞い上がり、ひからびた気持ちや寂しい心にやさしく降りかかるんです。だから、人は、満たされない気持ちのとき、無性に猫をだいてなでたくなるのでしょうね。~


それは小さな、小さな袋です。

くーちゃんは、悲しい色や、怒った風に、ひからびそうになった気持ちがひらひら舞っているのをみかけた時、その袋を開けます。

袋の中の、お日さま色の粉がふりかかると、
たちまちのうちに、本当のおひさまのようにほんわりと暖かく心持ち良くなって、
たいていのものたちは、ずいぶんとほっとするのです。

いちど、「その袋はどうしたの?」と、くーちゃんにきいたことがあります。
「袋、もってないの?」と、きいろい目を不思議そうにして、くーちゃんはきき返しました。

それは、人でもネコでもネズミでも、金魚でも、草でも、花でも、虫でも、
誰もが、生まれたときに1つ、持っているものなのだそうです。

でも、あんまり速く走っているうちに落としてしまったり、
そばにあるのに忘れていたり、自分で壊したり捨ててしまったりするのを、
旅をする間にくーちゃんは、たくさん見てきました。

あんな大切なものにそんなことするなんてと、不思議に思ったそうです。

そうそう、くーちゃんは、誰のどこがどんな具合なのかも、ちゃんとわかります。
たとえば、寂しがっているほっぺにそっと鼻キスしたり、
悲しいおなかに優しく頭をすり寄せたり、泣いている迷子の心と添い寝をしたり、
そうしながら、粉は間違いなく、その場所にふりかかります。

どうしてわかるの?ともきいてみるんですが、くーちゃんは鳥さんを眺めながら「あ、あーん」と鳴くばかり。
きっと、旅していると、お日様や影の出具合で南の方向がどっちか分かるように、自然と分かってきたのでしょうね。

多分こんな風に、
くーちゃんは普通だと思っているに違いないけど、
知らないこと、忘れていること、
ほかにもいろんなことをわかっている気がするんです。

今度、ひなたぼっこの時にでも、それとなく、くーちゃんにきいてみたいなと、思います。


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「すずめさ~ん」

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黒猫亭 [おはなし]

例えばこんな時に、黒猫亭に灯りがともります。

「あ、あそこに家がある。少しでも休ませてもらえるといいのだが。ともかく行ってみるか」

旅する人が幾日も道に迷って疲れはてた時。
日もくれ心細くなって辺りを見回すと、ふっと、遠くに灯りが見えます。

もうくたくたになった体の、最後の力を振り絞ってたどり着いたのが”黒猫亭”と書かれた小さな家です。

戸をあけると、
「いらっしゃいませ」
赤い前掛けをした小さな黒猫が、前足をきちんと揃え、お行儀よく座って出迎えます。

「どうぞこちらへ」
誰もが一瞬、人間でなかったことにびっくりしますが
でも黒猫は悪い猫には見えませんし
それより何より、体を休められることがありがたいと思いました。

旅人の前を歩く黒猫が案内した場所は、小さなお部屋にベッドが一つ。

綺麗に整えられたお部屋はあたたかで、
黒猫の用意してくれた温かなお茶を飲むと、
寒い中を歩いてきた旅人は、ひとごこちついてほっとします。

「では、おやすみなさい」
それを見た黒猫はそう言って、また前足をきちんと揃えて小さくお辞儀をし、戸を閉めました。


翌朝、旅人はすっかりとは言わないまでも、元気を取り戻して目がさめました。
このぶんなら今日はまた旅を続けられそうな気がします。

側に寝ていた黒猫が起き上がって、背伸びをしました。

「昨日の黒猫はお前さんかい?」
「にゃあ」
「昨日はたしかに人間の言葉を喋ったのに」
黒猫は何も言わず、尻尾をピンと立て、旅人に擦り寄ってから、ゆっくりと歩いて行きました。


黒猫亭の灯りは、体や心のくたびれた人が、一晩の宿を借りたい時にだけつきます。
もしそんな時があったら、森のなかに小さな灯りをさがしてみてください。
きっと、黒猫が待ってます。

多分、風がしらせるのでしょう。
猫は鼻がききますから。

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恐怖のネコ人間 [おはなし]

あるところに、ぐうたら主婦・Nがおりました。
(プライバシー保護のため、ここではあえて匿名にさせていただきます。。。)

Nには、ネコが3匹おりました。
(ネコの数はあってますが、うちじゃありません)

御存知のように、夏になろうという頃、これから寒くなろうとする頃、ネコたちは、一斉に毛が生え変わります。

かいかい~と頭をかくと、ふわふわ~と毛が飛び、お気に入りのネコじゅうたんでごろごろすると、じゅうたんは毛だらけ。
よしよし、いい子だね~と、頭をなでると手にまとわりつく毛。
さらにネコ同士、喧嘩でもおっぱじめようものなら、犯行現場のように飛び散る毛、毛、毛!
ようするに、この時期、家のどこに行っても、ネコ毛の落ちてないところなどありません。

Nは、ぐうたらですから、そんなもの気にもしてませんでした。
掃除?ちゃんちゃらおかしい。
「まあ、そのうち暇になったらやるわよ」なんて、言って、毎日、ひたすらネコとお昼寝にふけっておりました。
(実際には、忙しいところなど見たことないのですが・・。)

ところがある日のこと、なんだか、頭のてっぺんの両端がもぞもぞしだしました。
でも、Nは、ぐうたらですから、すぐさま、鏡の前に行って見てみるなんてことはしませんでした。

そして、またある日、今度は、Nはあくびをした時、口がずいぶんと大きく開いた気がしました。
でも、「まあ、一度に沢山ご飯を食べられて、便利だわ」と言ってるくらいでした。

更にある日、Nは手のひらが、もっこりぷにぷにしてきたことに気づきました。
「食べ過ぎて太ったのかしら?あらでも、きもちい~!」とNは逆に大喜び。

しかし、ある日、ネコの隣でお昼寝から目覚めた時、Nは、両腕を前にグーンと伸ばして、おしりをあげてのびをしている、4本足の自分に気づきました!
これにはもう、さすがのNも慌てて、家人に助けを求めようと、電話台に飛び乗り・・・。
そう、Nは仲間のネコたち同様、軽々と、電話台に飛び乗れたのでした!

電話台のところにあった鏡には、紛れも無い、中年ネコの姿が映っております。。。

いつもあまりにネコの毛だらけの中で暮らしていたので、Nは、自分にネコの毛が生えていたことに気が付かなかったんですねえ。


ネコの飼い主は、ネコの毛の掃除をちゃんとしないと、とんでもないことになるというお話。
飼い主の皆さん、お気をつけ下さい。
(私じゃないよっ!!!)

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(写真のネコたちは、主婦Nとは何の関係もございません、あしからず。)
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怪談 ネコのあくび [おはなし]

「nekoじいさん、おはなしして~」「おはなし~」「ねえ、nekoじいさーん」
お昼寝から覚めたゴンとシロとクロが、nekoじいさんのそばに集まってきました。

nekoじいさんは、目を細めながら3匹をなでて言いました。
「よおしよし、そうだな・・・じゃあ、今日はこんなおはなしはどうかな」

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昔々、旅のクロネコがおったそうな。

クロネコはその日、もう何里も何里も、森のなかを歩いていたので、すっかり疲れておってな。
夕暮れ時に、ちょうどいい木の洞を見つけたので、その晩はそこに休むことにしたんだ。

さいわい、クロネコは若かった。
ぐっすり眠った翌朝、洞からでてきたときには、もうすっかり疲れもとれておった。

見上げると、おひさまも照って実に気持ちのいい朝じゃったから、クロネコは、ぐーんと伸びをして、そのまま、おもいっきり、お~おきなあくびをしたのじゃ。

しかし、その時じゃった!

あんまり気持よく大あくびをしたので、なんと、クロネコは口から裏返ってしまったのじゃ!


「ええ~っ!」「うそだあ!」「こわいっ!」
「ははは、まあまあ、三匹とも、はなしは最後まで聞くもんじゃよ」


しかしな、クロネコは長い旅の間にいろんな事を見聞きしてきたのじゃろう。落ち着いたものじゃった。

そのまま木の洞に戻って、もう一眠りしたんじゃ。
そして、眠りから覚めるともう一度、ゆ~っくりと、お~おきな伸びと大あくびをした。

これでクロネコはまるきり元どおり。
そして、また今日の旅にでたんだとさ。


「ああ~よかったあ」


みんなも、大きなあくびをするときには気をつけることじゃよ。


「今日のおはなしは、これでおしまい。さあ、みんなでご飯でも食べに行きなさい。」
「はあい!」

でもね、まだお昼寝が足りなかったのかしら?
寝起きの悪いゴンちゃんは、あらあら、伸びをしたあと、ふわっと大あくび!!!

「ゴンちゃん!」
「お兄ちゃん!」
「わ!」
はっと気づいたゴンは慌てて両手で口を抑えました。

あぶない、あぶない。
よいネコのみなさんも、気をつけてくださいね!

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森の守りネコとクロとnekoじいさん(2) [おはなし]

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ところで、それはまだ、クロが森の中を旅していたときのことです。

寒さに凍えて、その晩の宿にも困っていたクロに、nekoじいさんの家を教えた森の守りネコは、こんなことも言ったのでした。

「私はおまえの額に白い月の模様をつけよう。この模様は、おまえがほんとうの幸せを見つける時までおまえを守ってくれるだろう。」
そいういって森の守りネコがクロの額に手をやると、そこに、白い、お月様模様のお守りが浮かび、すぐに、黒い毛に沈んでいきました。

nekoじいさんははじめ、クロがケガをしているのかと思いましたが、頭を撫でてもぐるぐると喜ぶばかりで、痛がる風もないので、白い模様はそのままクロの模様なのだと考え直しました。

クロは、大抵は昼間、nekoじいさんが働きに出かけている間は、一人っきりで留守番をしていましたが、もう凍えることのない家での暮らしはそうイヤではありませんでした。
でも、外から帰ってきたnekoじいさんに頭を撫でてもらう時間が、一等好きなのです。

毎朝、毎晩、クロは、nekoじいさんに鼻を向けて挨拶しました。
nekoじいさんも、とても気持ち良さそうに目を閉じたクロの顔を見るのが嬉しいので、毎朝、毎晩、クロを撫でるのが楽しみでした。

こうして、ひと月が過ぎ、ふた月が過ぎ、山に降り積もった雪がとけて暖かくなるにつれ、クロの額の模様は、月が欠けるように少しずつ落ちて、とうとう、山の雪ウサギがいなくなるころ、なくなってしまいました。

「おや模様がなくなってしまった・・」
nekoじいさんは、いつものようにクロの頭を撫でながら、不思議そうでしたが、クロには分かっていました。

「森の守りネコさん、このおうちを教えてくれてありがとう。あたしは幸せになります。」

そう、クロの幸せは、始まったばかりです。
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朝顔のきもち [おはなし]

「明日よ!」
お月さまにいちばん近い朝顔のつぼみが言いました。

このごろはもう、暑かった夏の頃のように、庭の朝顔たちが毎朝花を開かせることはないのでした。

「分かった、明日ね!」
「明日だって!」
「あした?」
「明日よ!」

1つのつぼみの言葉は、隣のつぼみへ、そしてその隣のつぼみへと、静かな月夜の庭に次々と広がり、まもなく、庭の全員の朝顔たちに伝わりました。

そう。今までの冷たい雨と風は止み、明日はいいお天気になるのです!

そしてやはり翌朝、久しぶりに山から顔を出したお日さまが、温かで明るい日差しを庭にも注ぎ始めました。

朝顔たちは、昨日の言い合わせ通り、一斉に、赤やピンクや紫や白の顔を開けます。

「わあ、今朝は朝顔がいっぱい!もう秋なのにねえ。」

やがて起きてきた寝坊の家人の言葉に、朝顔たちは、ちょっとはにかんで揺れました。


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