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真夏の夜の出来事 [おはなし]

真夜中の帰り道はもう人通りも車の往来もなく、ただ、暑かった昼間の名残りが、もわっとした空気ともやを残していた。

そんな道を淡々と車を走らせていると、どこからか声が聞こえた。
複数の人が喋っている声?

誰もいなかったような気がしたんだけど。

「今誰かいた?」
「んん?なに?」
横に座っている家人は、仕事疲れでウトウトしていたようだ。

「確かに何人かでおしゃべりしている声が聞こえたんだけどなあ・・」

もうほとんどうちに着こうかという頃、また聞こえだした。
「大丈夫?」とか「うん」とかなんとか、友達どうしで言ってるような感じ。

駐車場に車をおいて、聞こえたあたりに戻ってみる。
あたりは田植えもすっかり終わって、稲が育ち始めている田んぼだ。

声は聞こえない。

「空耳だったかなあ・・?」
もう遅いので、諦めてうちに戻り始めると、また聞こえだした。

でも人の声じゃない。
それは、あたり一面の蛙の声。

「あ、カエルさんたちだったのね。明日は雨なのかなあ?」
「ゲロゲロッ」「ゲロッゲロゲロッ」
水を張った田んぼ一面から聞こえる。

「おやすみなさ~い」

布団を敷いてもう寝ようかというころ、
窓の外ではまだ盛んにカエルたちが明日の天気の相談をしていた。

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