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二番目のネコ [ネコの日々]

くーちゃんは、淡雪のようだったと思う。

どこからともなくある日うちの庭に現れ、うちに来るようになり、やがてうちのネコになり、そして、15年目にふわっと消えてしまった。

お兄ちゃんとお姉ちゃんの間で、いつも遠慮がちで、「あたしは2番め」という気持ちがどこかにあったんじゃないかと思う。

くーちゃんは、飼い主がいないときはたいてい、リビングではなく、別の部屋の、横に倒したカラーボックスの上か、いつもくーちゃん用に開けている寝室の押し入れの奥にいることが多かった。
そこが落ち着くみたいだった。

飼い主がネズミのおもちゃを取り出して動かしだすと、最初にのって来るのはくーちゃん。
でも、そのうちお兄ちゃんとお姉ちゃんが気づいて遊びだすと、引っ込んでしまう。

季節が変わって、クッションが変わったり、ねこ座布団を変えたりすると、最初にチェックしてすぐに使い始めるのはくーちゃんだけど、一旦お兄ちゃんやお姉ちゃんが使うと、クンクン臭ったあと、「あたしはもう使えない」という感じで使わなくなる。

だから、くーちゃんが自分の部屋と思える場所があったのはよかった。

ただ、ご飯のときだけはさすがに譲れない。
最後まで、nekoじいさんの食べる魚(くーちゃんとシェアするために塩分なし)には積極的に声を出し、「ああもう」って感じで手が出るほどだったけど、食べ物以外は、なんとなく「あたしは2番め」と遠慮しているところがあった。

はじめに我が家に来たときにすでにゴンとシロがいたから、ネコの場合重要な”年功序列”を自覚していたといえば、そうなのだけど、飼い主は、そんな控えめなくーちゃんを見るたび、いじらしく愛おしくて、「あんたもうちの大事なネコなんよ。」となでていって聞かせてたけど。

その控えめな印象は最後まで拭えることはなかった。

最後の最後、多分暗いところにいたかったからだろう、風呂場にずっといるくーちゃんのところに行って、「くーちゃん、良くなれ、良くなれ」としばらく頭をなでてからリビングに戻ったら、やがてくーちゃんはリビングの窓際にあるネコ座布団に来てくれた。

きついときにはあまりかまってほしくないだろうと思って、ずっと机を隔てて、くーちゃんの歌を歌ったり名前を呼んだりしながら一緒にいたら、突然、苦しっ!という感じでもがき出した。
あわてて「くーちゃん!くーちゃん!」と呼んで側によると、幸い、しばらくしてそれは収まった。

それから、ずっとくーちゃんを見ていた。
何も反応してなかったくーちゃんが、手足をグーンと伸ばした。
リラックスするときのネコがする仕草だった。

お気楽な飼い主は、「あらくーちゃん、気分が良くなった」と少し安心したのだが。

思えば、あの時が、くーちゃんの最期だったんじゃないかと思う。

それからも、くーちゃんのお腹はわずかに上下しているように見えたけど、本当は、そう思いたかっただけかもしれない。

くーちゃんは最後の最後までふわっとしてた。

そんなくーちゃんが、天国に行ってもうひと月が経ってしまった。

まだ何も片付けられない。
カラーボックスの上の敷物にはくーちゃんの毛と汚したあとがついたまま、翌日用に洗ったお皿は次のご飯が入るのを待っている。
くーちゃんの部屋の簡易椅子の上のネコ座布団もおいたまま。

くーちゃんの気配を失いたくない。
まだもどってきてくれるんじゃないかと待っている。
ふと足音が聞こえる気がする。

あんたは、2番めと思ってたかもしれないけど、飼い主にはけっして2番目なんかじゃなかった。

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くーちゃんが庭に来た一番はじめの写真

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こんなにお転婆だった

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そしてゴン兄ちゃんが大好き!

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うちの猫になってアパートに移った頃、まだ、3匹とも若くて元気だった

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お腹を見せて挨拶

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クリスマス、「あたしにも、もらえるといいなあ?」と期待

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さて、日向ぼっこしようかな

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このキャットタワーは、まだゴンとシロとは隔離していた頃にくーちゃんのために買った
ここから、お外を眺めたり、鳥さんやアマガエルさんににゃあにゃあいったり
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森の守りネコとクロとnekoじいさん 最終章 [ネコの日々]

その日、nekoじいさんが仕事から戻ってくると、前足と後ろ足をきちんと揃えたクロが入り口に座っておりました。
クロはいつも、nekoじいさんの帰りをこうやって待っていたのですが、今日のクロは様子が違い、すっかり旅支度でした。

「長らくお世話になりましたが、また、旅に戻ることにしました」

nekoじいさんは、もうとっくにクロを家族だと思っていましたので、突然のクロの言葉にびっくりして言いました。

「何を言い出すかと思えば!もうこんなに仲良くなったんだし、いまさらお前がいなくなるなんて、考えられないし寂しいよ。なんとかこれからもずっとここにいてもらえないだろうか?」

しかし、クロネコはすっかり決意しておりました。

「私はもともと旅のクロネコです。あの夜、雪も降りそうであまりに寒かったので、一夜の宿をお借りするつもりで、森の守りネコさんに教わってこちらにやってきました。でもここでの生活は楽しく、暖かく、nekoじいさんは優しくて、とても居心地が良かったので、ついつい長居をしてしまいました。」

もはやクロの決心は変わらないように思えました。
nekoじいさんは、クロを引き止めることはできないと感じました。
それでも、これはあまりに急すぎます。

「そうか・・・とても残念だけど、どうあっても、もう気持ちは変わらないんだね・・。ではせめて、今夜一晩だけでも、一緒に過ごしてもらえないだろうか?こんなに突然に別れを告げられても、私は戸惑うばかり、どうしていいかわからないよ。」

「そうですね。じゃあ、もう一晩だけ、お世話になることにしましょう。」

それからnekoじいさんとクロは居間に座って、「土間の隅でいいから」とここに来た初めての晩のことや、やがてすぐにお洗濯をしたり、お留守番したり、nekoじいさんの帰りが待ち遠しかったことや、お魚を一緒に食べた朝のことや、遊んだりかけっこしたりした楽しかった日々のことに話しがはずみ、温かな時間を過ごしました。

nekoじいさんにとって、クロと過ごした時間は、あっという間のような、長かったような、何とも言えない気持ちでした。

翌朝、鳥の声にnekoじいさんは目を覚ましたが、隣りにいたはずのクロの姿はありませんでした。
 
「ああ、眠ってしまっていた。昨夜のことは夢だったろうか?」
そう思ってクロの名前を呼んでみました。

でも、いつもならしっぽをピンと立てて現れるクロはやって来ませんでした。

クロは時々、いなくなることがあったけど、しばらくすれば何事もなかったかのように戻っているので、今度もそうかな?と思い、しばらく仕事にも出ずに待ちましたが、それでも、クロはやって来ませんでした。

戸口にも行ってみましたが、遠くまで見える外の世界にも、クロの気配はありませんでした。

ただ昨夜、クロがいたところに黒い毛が僅かに残っていたのをみつけたとき、クロの旅立ちが本当だったのだと悲しくなりました。

nekoじいさんはその黒くて柔らかな毛を拾って大事そうに懐にしまいました。

「ああほんとうに・・クロは行ってしまった・・」

*******


クロは、6月12日の晩、15歳になったばかりで命を終えました。
とても痩せてしまった体でしたが、最後の最後まで、自力でゆっくりとトイレに行きご飯を食べ水をのみ、苦しいだろう小さな体で必死で戦っていました。

それをみていた飼い主は、あ、くーちゃん、良くなりそうかも?!と楽観的に捉えていた時もありましたが、それがバカみたいな楽観であったことに気づいた頃はもう遅く、くーちゃんは12日の夜、最後の力を振り絞って、私達のそばに来てくれたのでした。

飼い主は今更ながら、クロを飼ってたんじゃなくて、クロが私達を見てくれてたんだと気づきました。
お骨になって戻ってきたくーちゃんは、ゴンのときより一回り小さな骨壷に入って、ここにいます。

もう、あの柔らかな黒い毛におおわれた暖かな体をなでたり、顔をくっつけたりして幸せを感じることはできなくなってしまいました。

寂しい・・・

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ゴン亡きあと、シロ姉ちゃんとはもうちょっと仲良くしたいなーと思ってたみたい。

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近頃は、子猫の頃のように「抱っこして」と膝に手をかけてくることが時々あった。

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「お腹なでて~」のポーズ。飼い主も、「ああら、かわいいにゃんこがいるね~」と言って誘いに乗っかる。

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「なにか美味しい匂いがするわ~」

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「シロ姉ちゃん、怖くないよね」

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くーちゃんは、カメラを向けると怖がるので、なかなかいい写真が撮れなかった。

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ゴン兄ちゃんは、いつも大好きな優しいお兄ちゃんだった。

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飼い主と親睦中のくーちゃん。

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「ツバメさん来ないかなあ・・」
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