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月夜の晩に [おはなし]

月夜の晩には 亡くなった猫たちが戻ってきます。
細く細く、もう消えてしまうくらいの、でもくっきりと輝く三日月の夜のことです。

そのお月様が天高くにのぼった頃、飼い主の寝静まった暗くて静かな部屋に、やがておぼろげに、向こうの国に行ってしまった猫たちが姿を現してきます。

猫たちは、自分たちが使っていたお座布団で寝ていたり、壁に映る影を追いかけて遊んでみたり、お互いを掃除し合ったり、かけっこしたり、窓の外を眺めたり・・その姿は生きていた時のまま。
昔の通り、気ままで幸せそうに一晩を過ごします。

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でも向こうに行った猫たちは、どういうわけか、どの猫もとてもシャイ。
飼い主にさえ、姿を見せません。
あるいは見せてはいけないと、猫の神様にいわれているのかも?

だから、細い三日月が天高くにのぼっている真夜中に、猫たちが生きていた頃に聞こえていたおもちゃを転がす音や、足音が聞こえても、あるいは、そっとあなたを覗いているような気配がしても、猫たちを驚かせないように、そのままじっと目をつぶっていてあげてください。

途中で目を開けてしまうと、あわてて、猫たちは姿を消してしまうかもしれません。
以前のようにふれあえないのは寂しいですけど、そうでないと、慌ててしっぽだけ残ったなんて事になったら可愛そう。

猫たちは、ひとしきり自分たちが生きていた頃過ごした場所で好き勝手をしたあと、飼い主さんのほうに鼻を向けて目を細め、ふわと姿を消して、向こうの国に戻るのです。

でもね、大丈夫。
私達が猫たちのことを思い出す限り、細く光る三日月の夜には、必ずあなたのもとに戻っているんですから。
そしていつもそうだったように、猫たちは、穏やかで楽しく暖かな時を送っているんですから。

いつまでもいつまでも、あなたが望む限り、あなたのそばにいます。
見えなくたって存在するもの、そんなの世の中にはたっくさんあります。
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シェルブールの雨傘 [ネコの日々]

くーちゃんがうちに来たばかりの頃、覚えたての「シェルブールの雨傘」の挿入歌を歌っていた。

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「わかってるよね、それが無理だってこと」
「かくまってあげる、守ってあげる、だからどこにも行かないで」
(戦場に旅立つ恋人が、主人公のカトリーヌ・ドヌーブに歌うシーン)

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当時その歌詞が、お魚から目が離せない、でも私は飼い猫、とそれを鳴きながら我慢しているくーちゃんの可愛らしさやいじらしさと重なっていた。

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先日、もう1年以上そのままにしているくーちゃんの部屋を掃除していて、やっぱりその歌をうたっていたんだけど、別の部分の意味に気づいた。

「君にはわかってるよね、それが無理だってこと。愛しい君、僕は行かないといけないんだ。君は僕が君のことばかりを思っているとわかるだろう。そして僕は、君がぼくをまっていてくれると知っている。」(カトリーヌ・ドヌーブの元を去って戦場に旅立つ恋人の歌)

くーちゃん、ずっとそばにいてほしかった。
まだもう少し、そばにいてくれると思っていた。
まだ14歳だったじゃない。

くーちゃんがあの世へ行ってからずっと、そう考えていた私に、今度はくーちゃんがくれたメッセージかもしれない。

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でも。
それでも、いってほしくなかった、まだ一緒にいたかった・・・
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